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日本のIT業界は、あなたが思っているほど単純ではない

私が初めて日本に来た頃、日本は世界有数の技術大国だと思っていました。

ソニー。

パナソニック。

トヨタ。

新幹線。

ものづくりの国。

そんなイメージです。


だから当然、IT業界も最先端だと思っていました。

効率的で。

合理的で。

最新技術が当たり前に使われていて。

エンジニア中心の世界だと思っていました。


実際に働き始めてみると、少し戸惑いました。


何年も前の技術で動いているシステム。

誰も触りたがらないソースコード。

コードより長い設計書。

作業時間より長い会議。


最初はよく分かりませんでした。

なぜこんなやり方なんだろう。


でも何年も働いているうちに、自分の問いそのものが間違っていたことに気付きました。


本当の問いは、

「なぜこの仕組みが今まで成立してきたのか」

だったのです。


特に印象的だったのは採用です。

多くの国では、IT企業は技術力の高い人材を探します。

一方、日本ではIT未経験の新卒を採用し、一から育てることも珍しくありません。


最初は不思議でした。

でも今は少し理解できます。

日本のシステムは、技術力だけを見ているわけではありません。

信頼性。

協調性。

継続的な成長。

そういった要素も同じくらい重視されています。

時には技術力以上に。


そしてレガシーシステムの多さにも驚きました。

10年、20年と使われ続けているシステム。

何度も改修され、継ぎ足されてきたコード。


エンジニアなら、

「作り直した方が早い」

と思うかもしれません。

私もそう思っていました。


でも企業は違う視点で見ています。

システムが今も利益を生んでいるなら、大きな変更にはリスクがあります。

そしてリスクにはコストが伴います。


さらに、日本には多くのプロセスがあります。

承認。

レビュー。

設計書。

会議。

確認。

そしてまた会議。


小さな変更でも想像以上に時間がかかることがあります。

若い頃の私は、それがとても非効率に見えました。


もっと早くできるはずだ。

もっとシンプルにできるはずだ。

そう思っていました。


でも今は少し違う見方をしています。

日本のIT業界は、スピードを最優先にしているわけではありません。

最新技術を追い求めているわけでもありません。

エンジニアの理想を追求しているわけでもありません。


重視しているのは、

安定性。

予測可能性。

リスクの低減。

そして事業の継続です。


それが正しいとも思いません。

間違っているとも思いません。

ただ、優先順位が違うだけです。


海外のエンジニアは、日本に来る前に「技術中心の世界」を想像することがあります。

でも実際には「ビジネス中心の世界」に近いのかもしれません。

技術はビジネスのために存在する。

ビジネスが技術のために存在するわけではない。


10年以上働いた今、私はそれを良いとも悪いとも思いません。

ただ、とても日本らしいやり方だと思っています。

そして、それは多くの人が想像している日本のIT業界とは少し違うのかもしれません。

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